店主の独り言

修業時代、東京の某超有名果物店で大枚をはたいてコミスを1個だけ買ったことがあります。
その時、食べてみた感想は「なに？これ？」と言うのが正直な感想で、大枚をはたいて買うような物では、
とうてい思えなかった覚えがあります。
その後も気鋭の果物店のものを試してみましたが、同じようで、いつも自分が扱っているラ・フランスの方が
はるかにうまかったのです。
そんな訳で、まったく見向きもしなかったのですが、あの
天皇の料理番として有名な秋山徳蔵氏の一文を読んで、ある時、試験的に扱いを始めたのですが、熟させ方
が微妙で、なかなか美味いとは言い難く、何度か試行錯誤する内に、秋山徳蔵氏が表現したとおりのコミスに
仕上げる(熟させる)事ができるようになり、少しですが販売を開始したような次第です。

洋なし熱烈ファンの方なら必ず知っている(もし、ご存じなければ洋なし熱烈ファンとは言い難い)
非常に有名な洋なしだけれども、不思議な事にいくら探し回っても見つける事は非常に難しい、
いわく付きの洋なしがこのコミス(ドワイエンヌ・デュ・コミス)です。
なぜならば、他の洋なしに比べて栽培が極端に難しい為、栽培量が非常に少なく、その上、
洋なし熱烈ファンの中でも「超」がつく方々が買い占めてしまい、巷には出てこないのです。
さらに、コミスは追熟がやっかいなので店頭へ並べて売るような物では無い事も幻に拍車を
かけています。
最高のコミスも追熟に失敗すると見るも無惨、否、食すも無惨になり、普通の洋なしと変わら
なくなってしまいます。
この淡い包み込まれるようなほのかな香りと、口にした時の優雅なとろけるような美味しさは
超逸品です。正に「コミスを食せずして、洋なしを語るべからず」です。それに
天皇の料理番と言われた秋山徳蔵にして「４０年たった今でも、まだあの味が舌に残っている」と
言わしめたのは有名な話です。

さて、当店では予冷追熟の技術を習得したのを期に出来るだけ大勢の方に味わって頂けるよう
に努めています。
但し、上記の事からもお分かりいだけますようにご注文頂ましても、すぐにはお送りできないことも、
又、期日指定には対応出来かねる事が多々あります事をご了承頂きたくお願いします。